便潜血の欠点を克服した消化管疾患マーカー
主な対象疾患:大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病など
便中ラクトフェリン
(Fecal Lactoferrin)
概説・臨床的意義
現在、消化管疾患のスクリーニング検査として主に便潜血検査が利用されていますが、出血では検知されにくい疾患および症例も少なくありません。潰瘍性大腸炎等の炎症性消化管疾患や大腸癌では出血と同じように高い確率で消化管の炎症も確認されています。消化管疾患時に検出されるラクトフェリン(Lf)は好中球の特殊顆粒の成分であり、アズール顆粒成分である好中球エラスターゼよりも刺激に対して容易に脱顆粒しやすいため、鋭敏な好中球マーカーとして利用できます(図1)。すなわち、便中Lfの検出で、消化管の炎症状態が鋭敏に把握できます。
炎症状態(好中球活動)が亢進する消化管疾患としては、潰瘍性大腸炎とクローン病の炎症性消化管疾患や大腸癌などが知られています。炎症性消化管疾患においては、炎症状態の変化を鋭敏に察知できるということで、活動性の指標として利用できることが示唆されています(図2)。また、大腸癌においては、潰瘍を伴った進行癌で高率に検出されるだけでなく、早期癌でも検出率が高いことが確認されています。(表 1)


検査要項

項目コード 9710
検査項目名 便中ラクトフェリン
検査材料・検体量 便 1〜2mg
容器 便潜血容器
保存方法 高温を避けて常温保存
測定方法 ELISA・LA法
基準値・単位 50 ng/ml 以下
所要日数 2〜6日
定価 1,000円
備考 研究用検査

参考文献
1)田端一恵,他:便中ラクトフェリンと大腸癌の進行度に関する検討,JJCLA:2003,28:652-656.
2)Sugi K,et al:Facal lactoferrin as a marker for disease activity in inflammatory bowel disease :comparison with other neutrophil -derived proteins,Am J Gastro-enterol:1996,91:927-934.
3)Uchida K,Matsuse R,Tomita S,et al:Immunochemical detection of human lactoferrin in feces as a new marker for inflammatory gastrointestinal disorders and colon cancer,Clin Biochem:1994,27:259-264.
4)濱野康之,他:消化管スクリーニングのための便中ラクトフェリン測定試薬の開発,JJCLA:2001,26:138-142.

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