結核は、大正から昭和初期にかけて、死亡率のトップを占めていました。しかし、終戦直後、生活の向上や、医学の進歩により急激に患者を減らすことができました。もはや、結核は「過去の病気」になったかのように思われています。しかし、わが国では、現在でも年間約5万人が発病し、約3千人の死亡者が報告されています。
また、1997年(平成9年)には、新たに感染した患者数が38年ぶりに前年より増加するという事態が発生し、厚生省(現:厚生労働省)より結核緊急事態宣言が発表されたほどです。結核は復活の兆しを見せています。
最近の結核事情
なぜ結核が増加したのか?
人々が、結核に対する関心、認識が薄れてきたこと、また社会病とも言われる下記のことが原因と考えられます。
■免疫力の低下した高齢者の患者が増えた。
■20〜30歳代の患者が増えた。(ダイエットや偏った食生活で栄養状態が悪くなる)
■大都会(大阪、東京)での患者が増えた。
(外国人労働者、ホームレス、不法滞在者、高率に感染している)
■集団感染が多発している。(結核に対する認識が薄れている)
結核とは?
結核は、大きさ1〜4ミクロンの棒状の「結核菌」という細菌が原因となって起こる病気です。主に肺で増殖し、肺炎のような症状を引き起こします(肺結核)。肺以外にも、血液(粟粒結核)、脳(結核性髄膜炎)、腎臓(腎結核)、骨(カリエス)など全身いろいろなところで増殖するのが、結核菌の特徴です。
症状
風邪とよく似ているため、見逃されがちです。咳、痰、が止まらず、微熱、寝汗、食欲不振、体重減少などの症状が、安静にしても、2週間以上続くと、結核の可能性があります。
感染経路
結核患者が、咳やくしゃみをした時に、結核菌が空気中に飛び散り、これが吸い込まれることによって感染します(飛沫感染)。しかし、感染することと、発病することは、全く別で、感染すると、免疫機能が働き、結核菌は、肺の中で、冬眠状態に入り、ほとんどの人は、発病しません。感染した時に、免疫機能の低下や、栄養状態、健康状態の悪い人に発病します。
検査方法
主に喀痰を検査材料として、結核菌の存在を調べますが、病状に応じて胃液や、髄液などさまざまな検査材料を用います。
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結核菌の主な検査方法
検査方法 |
検査の内容 |
遺伝子検査 |
結核菌の核酸(DNAまたはRNA)を調べる |
塗抹鏡検検査 |
材料を染色し、顕微鏡で結核菌の有無を調べる |
培養同定検査 |
材料を特殊な培地で発育させ、増殖の有無を調べる |
ナイアシンテスト |
培養同定検査で増殖した菌が結核菌かどうかの鑑別を行う |
薬剤感受性検査 |
結核菌に有効な薬を調べる |
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結核をなくすためには、早期発見、早期治療で、感染を最小限に食い止めることが重要です。
そのためにも、結核に対する再認識が求められています。 |