ヘリコバクター・ピロリ菌は大きさ3ミクロンのらせん状で、数本の鞭毛を持っています。この鞭毛の活動により、胃粘膜に潜り込み、増殖し、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌を引き起こします。
今まで、強酸性の胃酸の中で細菌の生息は出来ないと思われていましたが、1982年にオーストラリアでヘリコバクター・ピロリ菌が発見されました。胃内で生息できる理由は、菌自体が持つ、ウレアーゼという酵素が、胃内の尿素を分解し、アンモニアを作り、胃酸を中和しているからと考えられます。
感染経路(経口感染)
ヘリコバクター・ピロリ菌は、酸素があると死んでしまい、熱に弱いといわれていますが、生育条件が悪くなると、球状変化し、一種の冬眠状態となって、生き延びるといわれています。おそらく、水の中で球状変化し、冬眠状態になっている菌が、口から入り胃にたどりついたときに、元のらせん状にもどり活動するといわれています。
感染率
胃潰瘍患者の80%、十二指腸潰瘍患者の90%に、ヘリコバクター・ピロリ菌が認められています。また、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染率は、衛生環境(上水道)に関係するといわれており、健常者では、30才代で40%、40才を過ぎると、70〜80%が感染しており、衛生環境が改善された現在、若年者は数%の感染率といわれています。しかし、感染者全ての人に、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌が起こるわけではなく、ほとんどの人は、発病しません。
検査方法
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているかを調べる検査法は、内視鏡(胃カメラ)を使用して採取した組織を調べる検査法と、内視鏡を使用せず血液や、吐く息(呼気)を採取し調べる検査法があります。
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主なヘリコバクター・ピロリの検査法
内視鏡を使用する方法 |
鏡検法 |
組織を染色して顕微鏡でピロリ菌を調べる |
迅速
ウレアーゼテスト |
組織から、ピロリ菌の持つウレアーゼという酵素の活性を利用しpHを調べる |
培養法 |
組織を培養しピロリ菌の有無を調べる |
内視鏡を使用しない方法 |
尿素呼気試験 |
尿素製剤を服用し、吐く息(呼気)を採取し、ピロリ菌が尿素を分解したときに発生する二酸化炭素を調べる |
抗体測定法 |
血液中のピロリ菌に対する抗体を調べる |
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