前立腺疾患



前立腺は男性性器の1つで、形、大きさとも栗の実に似ています。前立腺は、膀胱の真下にあり、尿道の上部と、精子を尿道に送り込む通路となる射精管とをつつみこんでいます。

前立腺の働き

前立腺には、主に2つの働きがあります。

1.射精の瞬間に、収縮を繰り返して、射精管に送り込まれてきた精液を尿道へ排出する圧縮ポンプの働きをします。

2.精巣(睾丸)から作られる精子の運動を良くするため、弱酸性の液を分泌し、精子を元気にさせ、精液と同時に尿道へ放出します。

前立腺の主な疾患

前立腺の働きは、青年男性では盛んに活動しますが、高齢になると役割を終えて次第に退化し、時には異常を来たす場合があります。その代表的な疾患名は、前立腺肥大症と前立腺癌です。

前立腺肥大症

50歳代から多くみられ、肥大した人全員が前立腺肥大症ではなく、前立腺が病的に大きく肥大し、尿道を圧迫して排尿障害を引き起こす症状をいいます。

 主な症状
  ・ 排尿回数が増えた。(特に夜間)
  ・ 排尿勢いがなく、時間がかかる。
  ・ 尿がすぐに出ない。
  ・ 残尿感がある。

前立腺癌

前立腺の悪性腫瘍で、50歳以上に多く見られます。症状は、初期に無症状で、病気が進行すると骨に転移しやすく、腰痛、下肢の痛み、血尿などがみられます

検査方法

超音波検査やX線検査、直腸指診の他に、下記の表に示した血液中の腫瘍マーカーを調べる検査方法があります。


前立腺の主な検査と臨床的意義
検査項目 臨床的意義
PAP
(前立腺酸性 フォスファターゼ)
前立腺で合成される酵素。 前立腺癌で上昇しますが、早期癌での陽性率が低いため、治療後の経過観察に有用とされています。
PSA
(前立腺特異抗原)
前立腺上皮で合成される、蛋白質。 前立腺癌、前立腺肥大症で上昇し、特に前立腺癌で著明に増加し、前立腺癌のスクリーニング検査に広く用いられています。
高感度PSA 低濃度のPSAを検出する検査方法。 手術後や治療の経過観察や、再発の推測などに有用とされています。
フリーPSA/ トータルPSA比
   (PSA F/T比)
PSAは血中で遊離型(フリーPSA)と複合型(PSA―ACT)の2つの状態で存在します。前立腺肥大症では、フリーPSAが上昇し、F/T比を求めることにより、前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別に有用とされます。
PSA-ACT 前立腺癌では、全PSA中のPSA―ACTの割合が高いため、前立腺癌の診断に有用とされています。
γ-Sm
(γ-セミノプロテイン)
精液中に存在する糖蛋白質。 前立腺癌に特異性が高い。 マッサージや生検後は高値となる可能性が高い。