魚の毒
魚類の中には毒を持つものが多数存在しています。一般的にはフグの卵巣や内臓の毒が有名ですが、フグ以外にもフグ毒を持つツムギハゼ、オニダルマオコゼのように体表のトゲに毒を持つ魚、ウツボのように歯に毒を持つ魚、アオブダイのように毒を持つ餌を摂取し内臓に毒が蓄積する魚、熱帯のサンゴ礁の周囲にいるシガテラ毒魚など、さまざまな形で毒を持つ魚がいます。
フグとテトロドトキシン
フグは世界中に約118種おり、日本近海にはこのうち約40種が生息しています。昔からフグは食用されてきましたが、漁獲海域が広がり、これまで知られていなかった有毒なフグが市場に流通したことで、食中毒事件が多発したことから、厚生省は食用できるフグの種類、部位、漁獲海域などを規定しました。
日本で食用できるフグはトラフグ、マフグ、ショウサイフグなど22種類で、種類によって食用部位も限られています。また、料理店では各都道府県が発行するフグ調理師免許を持つ者のみが調理を許されています。
フグ毒による食中毒事件は、毎年20件前後発生しており、死者も毎年数名でています。フグ毒のテトロドトキシンは、青酸カリの1000倍以上の毒力を持つ神経毒で、熱や酸に強く、煮炊きした程度では分解しません。フグの種類によって毒のある部位や量が異なり、同一種でも産卵期(3月頃)の毒力がもっとも強く、個体差もあります。フグ中毒の潜伏期間は1時間以内と短く、症状は、くちびるや手の感覚麻痺、運動神経麻痺、呼吸麻痺で、摂取量にもよりますが発症後8時間以内で死に至ります。
フグ中毒のほとんどは素人料理で発生しています。専門店以外では絶対に食べないことが予防のポイントです。
アオブダイとパリトキシン
最近ではアオブダイの切り身による食中毒事例が、1997年10月に報告されています。アオブダイが餌とするスナギンチャク類の持つパリトキシンという猛毒がアオブダイの内臓に蓄積されているのが原因だと考えられています。同様の事例はハギやフィリピン産のサバでも報告されています。
パリトキシンによる中毒の症状は筋肉痛といわれており、腰や四肢のしびれ感、筋力低下や痙攣、重症例では呼吸困難、不整脈、ショックや腎障害が報告されています。
イシナギ中毒
イシナギ、メヌケ、カンパチなどの肝臓摂取により、嘔吐などの症状と皮膚の落屑を伴う中毒で、過剰のビタミンAによるものと言われています。
シガテラ中毒
世界中で毎年約2万人もの中毒を起こすシガテラ中毒は、熱帯及び亜熱帯の主としてサンゴ礁の周囲に生息するシガテラ毒魚を摂取することによって起こる致命率の低い食中毒の総称です。サンゴ礁が破壊される時に発生する藻類を摂取することで毒化すると考えられ、シガテラ毒を蓄積する魚はオニカマスなど数百種類にのぼると言われています。
タコの毒
大阪湾にも生息しているヒョウモンダコは体長10cmほどの小型のタコで、興奮すると美しく光る青い斑紋が現われます。つい手を伸ばして咬まれると、神経毒のテトロドトキシンを持っており、重症の場合には死亡することもあります。
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