リステリア属菌 Genus Listeria
リステリア・モノサイトゲネス



リステリア属には数種類の菌が含まれますが、人に感染を起こす菌種のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)を一般的に「リステリア」と呼んでいます。リステリアは自然界の広くに分布し、河川水や下水、土の中など環境のあらゆるところにいるため、家畜や野菜など様々な食品が汚染される可能性があります。この菌の特徴は低温でも増殖できる点で、0℃から45℃で発育することができます。また、10%の高い塩分濃度の環境下でも発育することができます。このため、この菌によって引き起こされるリステリア症の原因食品は多彩です。

リステリア症(Listeriosis)

リステリア症は人畜共通感染症の一つで、ヒトには髄膜炎、脳炎、敗血症などを引き起こします。感染を起こしやすいのは、妊婦(胎児)、新生児、乳幼児、高齢者、免疫力の低下した人で、新生児と5歳未満の小児がリステリア症の半数以上を占めます。妊娠中の感染では、流産や死産の原因となるので注意が必要です。健康な人では感染をしても発病しないことが多い日和見感染症として注目されています。

感染経路には不明な点が多いものの、諸外国では食品を媒介したリステリア症が多数報告されています。ただし、日本では食品が原因となったリステリア症は確認されていません。原因食品としては、食肉、食肉加工品、生野菜、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)や調理済みの低温保存食品(弁当、惣菜など)があり、他にもいろいろな食品が原因となります。特に加熱せずに食べる生ハム、ソーセージやソフトチーズには注意が必要です。リステリアは低温でも増殖できるため、低温長期保存への過信は禁物です。

症状は、24時間から3ヶ月の潜伏期間後に、倦怠感や38〜39℃の発熱を伴う頭痛、悪寒、嘔吐などのインフルエンザ様症状が見られ、重症になると髄膜炎や、意識障害、けいれんを起こす場合があります。しかし、食品からの経口感染に多くみられる腹痛や下痢などの急性胃腸炎症状はみられません。しかし、発生数こそ少ないものの、日本全国で認められる可能性もあり、診断や検査に注意が必要な感染症です。


リステリア・モノサイトゲネス

細菌学で有名な Lister卿に因んで「リステリア(Listeria)と命名され、リステリアに感染した動物の血液中に単球(monocyte)と呼ばれる白血球の一種が多く見られたことから、この名前がつきました。