貝の毒
魚類にはフグやアオブダイのように毒を持つものが多数存在しますが、貝類にも毒を持つものがあり、食中毒症状や全身性麻痺症状を起こします。
貝毒に対する厚生省通知は多数あり、食中毒予防策としては、「麻痺性貝毒等により毒化した貝毒の取扱いについて」(昭和55年7月1日付け環乳第29号厚生省環境衛生局長通知)、「貝毒の検査法等について」(昭和55年7月1日付け環乳第30号厚生省環境衛生局乳肉衛生課長通知)、「麻痺性貝毒等により毒化した貝類の取扱いについて」(平成4年4月1日付け衛乳第77号厚生省生活衛生局長通知)及び「麻痺性貝毒等により毒化した貝類の流通防止について」(平成4年4月24日付け衛乳第99号厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知)などがあります。
麻痺性有貝毒(PSP:Paralytic Shellfish Poison)
主にイガイ、ホタテ、アサリ、ムラサキガイなどの二枚貝によっておこる中毒で、食後30分程度で口唇、舌、顔面が痺れ始め、次いで全身に痺れが広がります。重症の場合は、呼吸麻痺により死に至る場合もあります。
これらの原因は、貝が摂取するプランクトン(Protogonyaulax属、Pyrodinium属)が持つ自然毒により毒化されることで起こり、代表的な有毒性分はサキシトキシンです。これらの毒は加熱でも容易に分解しないため、毒が蓄積される中腸線を避けて食べるのが防止策です。
下痢性貝毒(DSP:Diarrhetic Shellfish Poison)
麻痺性有貝毒と同じくイガイ、ホタテ、ムラサキガイなどの二枚貝を食べることで起こります。食後、数時間で下痢や嘔吐、腹痛などの症状を示しますが、発熱はほとんどなく死亡例もありません。
貝の有毒プランクトンの摂取による毒化が原因で、貝類の主産地では毒化時期に毒性の定期的なモニタリングが実施されており、規制値以下の場合のみ出荷されています。
光線過敏症
アワビの内臓(中腸腺)を食べた翌日以降に、顔面など日光にさらされる皮膚に発赤や腫れ、疼痛を示します。貝の摂取する海藻のクロロフィルが原因といわれ、2月〜5月に起こる季節性の毒化現象です。
テトラミン中毒
ヒメエゾボラ、エゾボラモドキなどの巻貝によって起こる中毒で、食後30分から1時間で頭痛やめまい、嘔吐などの症状を示します。の唾液腺にあるテトラミンという毒が原因なため、調理時に唾液腺を取り除けばこれらの症状は起こりません。まれに、酩酊感を得るためにわざと食べる場合もあるとのことです。
バイ中毒
巻貝のバイ貝はネオスルガトキシン、プルスルガトキシンやまれにテトロドトキシンの毒を持ち、食することで視力減退、瞳孔拡散、口渇、便秘などの症状を示します。1957年に新潟で中毒死例が記録されています。
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