カビは、医薬品や食品に利用される反面、アレルギーや真菌症、水虫の原因になったり、食品上でカビ毒を産生し食中毒やガンの原因になったりします。
微生物の分類の中でカビは、キノコ、酵母と同じ真菌類(Eumycetes)に分類されます。真菌類はさらに、藻菌類、子嚢菌類、担子菌類、不完全菌類に分類されますが、キノコ類は担子菌類、ほとんどのカビと酵母は不完全菌類(Funji imperfecti)に分類されます。カビが属する不完全菌類は、真菌類の中でもヒトに病原性を持つものが多く、他の真菌と違い有性生殖を行わずに無性生殖で増殖します。カビは澱粉や糖類を含むパンや菓子類の食品を好みますが、あらゆる物を栄養源にするため、あらゆる場所で発育します。カビの発育には栄養源の他に、酸素と10〜30℃の温度と水分・湿度が必要です。
カビの代謝産物の中で、ヒトや動物に毒性を示す物質をカビ毒と呼び、現在300種類以上のカビ毒が報告されています。全てのカビがカビ毒を産生するとは限りませんが、カビが生えた食品は食べないようにするのが、カビ毒による食中毒の予防法です。
アフラトキシン
カビ毒の中でもアスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)が産生するアフラトキシンは強い急性毒性(脳、肝臓、腎臓などに強い変性作用を呈する)を示すとともに、慢性毒性(強い発ガン性)を有しています。
アフラトキシンにはB1、B2、G1、G2、M1などの種類があり、その中でもB1の毒性がもっとも強いことから、B1の基準を設けている国が多く、日本でも食品衛生法で「10ppb以上のアフラトキシンB1を検出してはいけない」と規制されています。
アフラトキシンが検出される食品としてはピーナッツとその加工品、ピスタチオナッツ、トウモロコシ、穀類、ナチュラルチーズなど多くの食品から検出されていますが、微量のためほとんど問題がありません。しかし、1998年にイラン産ピスタチオナッツから高濃度のアフラトキシンが検出される件数が増えたことから、厚生省は検疫所での検査方法を強化しています。なお、これらの違反品は国内に流通せず、全品が積み戻されています。
トリコテセン系カビ毒
フザリウム属(Fusarium)のカビは、麦やトウモロコシおよびその加工品でカビ毒を産生します。日本では昔から俗に赤カビと呼んでおり、麦に大被害を与えていました。このカビ毒はデオキシニバレノール、ニバレノール、ゼアラレノンなどで、嘔吐、腹痛、下痢の中毒症状や造血機能障害、免疫機能抑制作用があります。
その他のカビ毒
アスペルギルス・オクラセウスなどが産生するオクラトキシンAは腎毒性、肝毒性のカビ毒で、発ガン性も報告されています。ペニシリウム・シトリナムなどが産生するシトリニンは腎細尿管上皮変性を起こすカビ毒です。米に寄生して黄変させることから、俗に黄変米と言われました。
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