カンピロバクター属菌 Genus Campylobactor
カンピロバクター・ジェジュニー  コリ  ヒオインテスティナリア  フィタス



カンピロバクター属の菌は、1913年に流産をした牛から初めて分離され、ビブリオ様の菌であったため、当初は、ビブリオ・フィタス(Vibrio fetusと命名されました。しかしその後、ビブリオ属菌との化学的性状や遺伝学的性状の違いで新しい属に分類されました。

カンピロバクター属の菌はサルモネラ属の菌と同じようにニワトリやウシ、ブタ、ヤギなどの家畜やイヌなどのペットの腸管内に分布しているため、これらの動物の糞によって汚染された肉や水を介して食中毒を起こします。この菌は少量の酸素がある状態(微好気)という条件下で増殖をするため、常温の空気の中では徐々に死滅していきますが、4℃以下の温度ではかなり長期間生存できます。また、少量の菌量で発病するため、飲料水への汚染があった場合には大量の患者発生が起こることがあります。

カンピロバクター属には10数種の菌種の亜種が含まれますが、食中毒のsize="-1">カンピロバクター・ジェジュニーCampyrobacter jejuni
)とカンピロバクター・コリC.coli )の2菌種があります。

カンピロバクター・ジェジュニー

ウシ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコ、水鳥など多くの動物の腸管内に分布しています。そのなかでも、ニワトリは主要な感染源です。ヒトには経口感染によって胃腸炎を起こし食品や飲料水を介して集団食中毒を起こすこともあります。特に乳幼児は感染しやすく注意が必要です。カンピロバクターによる胃腸炎の潜伏期間は2〜7日で、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などの前駆症状があり、次いで吐き気、腹痛がみられ、その数時間後から2日後に下痢症状が起こります。下痢は水様便ですが、粘液や血便をみることもあり(小児では血便を伴うことが多い)、O157感染との見分けが難しいことがあります。通常、発熱は38〜39℃で、腸炎のほかに敗血症や関節炎、髄膜炎を起こすこともあります。

カンピロバクター・コリ

ブタの腸管内に分布しており、まれにヒトに下痢症を起こします。

最近カンピロバクター属菌による腸炎は増加傾向にあり、カンピロバクター・ヒオインテスティナリアC.hyointestinalis)が新しく下痢症を起こす菌として出現しています。

食中毒菌以外のカンピロバクター属菌としては、下記のカンピロバクター・フィタス(C. fetus)がヒトに種々の疾患を起こす菌として有名です。

カンピロバクター・フィタス

この菌種には他に亜種 fetusと亜種 venerealisを含み、家畜に流産を起こす菌です。このうち亜種 fetusはヒトにも感染し、敗血症や心内膜炎、関節炎、髄膜炎などを起こします。