エロモナス科に属するエロモナス属菌は淡水系の常在菌で、河川水や湖、汚水中などの自然環境に広範囲で分布していますが、沿岸海水中にも分布をしています。
エロモナス属には下記の4菌種が含まれ、上から2菌種が厚生省指定の食中毒の原因菌です。
エロモナス・ヒドロフィア(A.hidrophila)
エロモナス・ソブリア(A.sobria)
エロモナス・キャビエ(A.caviae)
エロモナス・サルモニサイダ(A.salmonicida)
エロモナス属菌は水系の常在菌のため、淡水魚やカキ、(海)水産食品、飲料水がこの菌に汚染されていることが考えられます。しかし、この菌は本来、淡水魚、カエル、ヘビなど冷血動物の病原菌であるためか、エロモナス属菌による集団感染事例はほとんどなく、日本での確実な事例はありません。しかし、乳幼児や免疫力の低下した人に重症エロモナス感染症を起こす可能性があるので注意は必要です。この場合の感染経路としては、経口摂取のほかに傷口などからの侵入も考えられます。
エロモナス・ヒドロフィラ
エロモナス・ソブリア
エロモナス・ヒドロフィラとソブリアはヒトに急性の胃腸炎を起こす、食中毒の原因菌です。
この菌による下痢は比較的軽症で、数日間で回復しますが、まれにコレラ様、赤痢様の症状を呈する場合があります。また、エロモナス・ヒドロフィアは癌患者や白血病患者のような免疫力の低下した人に敗血症、髄膜炎、尿路感染、術後感染、創傷感染、心内膜炎を起こすことがあります。
エロモナス・キャビエ
厚生省指定の食中毒菌ではありませんが、ヒトに胃腸炎を起こす場合があります。この菌による下痢はしばしば慢性的に経過し、治療しない場合には1ヶ月以上も下痢症状が続く場合があります。
エロモナス・サルモニサイダ
低温菌でヒトからはほとんど検出されません。 |
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